東京狩猟物語〜ゼロからの狩猟〜第5話
第5話:わな猟免許の試練
午後の試験が進む中、クロは次の挑戦に向けて準備を整えていた。「第一種銃猟免許」の実技試験をなんとか乗り越えたが、まだ終わりではない。次に待っているのは「わな猟免許」の実技試験。わなの設置方法や道具の名前、そして最後には距離感覚を試される「目測試験」もある。
会場に集まった受験者たちは、それぞれ不安と緊張を抱えているようだった。クロもその一人だが、ここまで来たからには絶対に最後までやり遂げたいという強い気持ちがあった。
「次は、わな猟免許の試験だ。気を引き締めていこう」
クロは自分に言い聞かせ、試験会場に足を踏み入れた。
わなの設置試験 ― 初めてのわな
わな猟免許の最初の試験は「わなの設置」。決められた罠を正確に設置するというもの。
クロはこれまでの準備を思い出しながら、慎重に動作を開始した。
わなを作動させるための適切な場所を探す。場所が決まると、クロは静かに行動し、慎重に設置を始めた。周囲の静寂の中で、彼の手の動き一つ一つが重みを持つ。
だが、思わぬ問題が起こった。上手く作動できない、スムーズに設置が進まなくなったのだ。
焦る気持ちが胸に広がる。
「くそ…こんなところで失敗するわけにはいかない…」
クロは深呼吸をして、冷静さを取り戻した。焦らず、ゆっくりとギミックを動かし、慎重に設置を進めた。最後にもう一度確認し、試験官に合図を送る。試験官は無言で頷き、次の課題に移るように指示した。
「よし…何とかクリアだ」
クロは少し汗ばんだ手を拭い、次のステップに進んだ。
道具の名前 ― 忘れた記憶を呼び戻せ
次に待ち受けていたのは「道具の名前を答える」試験だ。わな猟に使われる道具の名前を一つ一つ正確に答えなければならない。クロは試験官が次々と差し出す道具を見て、頭の中で記憶を呼び戻した。
「この道具は…『くくり罠』だな…」
クロは慎重に答えを口にした。試験官は無表情のまま次の道具を差し出す。プレッシャーがかかる中、彼は次々と道具の名前を答えた。
だが、一つだけ、どうしても思い出せない道具があった。名前が頭の中からすっぽりと抜け落ちてしまったのだ。
「なんだっけ…この道具は…」
クロは焦った。冷や汗が額を伝う。だが、すぐに無理に思い出そうとするのをやめ、深呼吸した。
「落ち着け。必ずどこかで見たはずだ…」
そう言い聞かせて、クロは数秒の沈黙の後、ようやくその道具の名前を思い出した。
「これは…『筒式イタチ捕獲機』です」
答えが正しかったのかどうかは試験官の反応ではわからなかったが、次の試験に進むことができた。
目測試験 ― 距離を見極めろ
続いて行われたのは「距離の目測試験」。この試験では、指定された距離を目視で判断し、その距離を答える必要がある。わな猟では、動物の移動やわなの設置場所を判断するために、距離感が非常に重要だ。
クロは目の前の風景を見つめ、頭の中で距離を計算していった。普段からアウトドアで培った感覚を頼りに、距離を読み取る。
「20メートル…いや、もう少し遠いか?」
クロは一瞬迷ったが、自分の感覚を信じて答えを導き出した。
「30メートルです」
自信がないまま答えを口にしたが、次の試験に進むことができたため、ひとまずクリアしたと判断した。
狩猟鳥獣の識別 ― 最後の試験
最後に待っていたのは、「狩猟鳥獣の名前を写真で答える」試験だ。写真を見せられ、その動物が何であるかを筆記で答えるというシンプルな試験だが、焦りや緊張の中では間違える可能性が高い。
クロは写真を一枚一枚確認しながら、慎重に記入。
「これは…キジかな」
一つ一つ確実に答えを出していく。最後の写真まで終わり、クロは試験をすべて終えたことに、ほっと胸をなでおろした。
試験の終了 ― 2週間後の結果
試験が終わり、クロはようやく重いプレッシャーから解放された。だが、合否の結果はすぐにはわからない。試験官は全ての試験が終わった後、2週間後に結果を通知すると告げた。
「2週間か…長いな…」
クロは試験会場を後にし、ようやく肩の力を抜いた。家に帰る途中で、彼は自分がここまでやってきたことを振り返り、少しの満足感とともに、不安と期待が入り混じった気持ちを抱いていた。
「これで終わりじゃない。まだ次のステップがある」
彼は心の中でそう呟き、家路を急いだ。
追記
クロは「わな猟免許」の実技試験で、わなの設置や道具の名前を答える場面に直面しました。特に「わなの設置方法」や「道具の名前の覚え方」など、わな猟免許の試験に挑む姿が描かれ、狩猟免許取得に向けた努力がリアルに描写されています。また、距離の目測や「狩猟鳥獣の名前を答える」試験など、試験内容が詳細に描かれています。