東京狩猟物語〜ゼロからの狩猟〜第7話

狩猟免許

東京狩猟物語〜ゼロからの狩猟〜第7話

第7話:冒険への拒絶と葛藤

狩猟免許の試験結果を待つ日々の中で、クロは新たな迷いと向き合っていた。ベテラン猟師との出会いに心を揺さぶられ、狩猟への情熱は一層深まっていたが、同時に不安も募っていた。

狩猟生活への不安 ― 家族の反応

夜、リビングでくつろいでいると、妻が静かに切り出した。

「クロ、本当にこの道を進むつもり?」

クロは一瞬、言葉を失った。彼女の表情からは心配がにじみ出ていた。家族がいる身で、狩猟というリスクのある活動を続けることへの責任を思い出し、心が揺れる。

「自分のやりたいことをするのは大事。でも、家族のこともあるし、何かあったらどうするの?」

妻の問いかけに、クロはすぐに答えられなかった。狩猟の道はただの趣味ではなく、場合によっては危険が伴う。彼女が心配するのも当然だ。クロは自分が抱えている責任の重さを再認識した。

「わかってる。でも、この道を進まなきゃ、自分がやりたいことを諦めてしまうことになる…」

その一言を残し、クロは部屋に戻った。妻の気持ちを思うと胸が痛むが、それでも彼の心には強い思いがあった。彼が目指しているのは「狩猟という新しい生き方」だったのだ。

 ― 職場での葛藤

翌日、職場でも予期せぬ障害が待っていた。上司が突然、クロに仕事量を増やすよう命じたのだ。新しいプロジェクトが始まり、リーダーシップを取るべき立場にいるクロに対して、仕事に集中するよう強く求められた。

「今はこの仕事が大事な時期だ。狩猟なんてやっている場合じゃないぞ」

上司の言葉は、クロにとって鋭い一撃だった。仕事の責任と狩猟の道への挑戦が、彼の中でせめぎ合っていた。職場での信頼を失いたくないという気持ちと、自分の夢への挑戦を諦めたくない気持ちがぶつかり合い、どうすべきか決断がつかなかった。

「本当に、狩猟なんて始めていいのだろうか…」

心の中で芽生えた迷いは、やがて彼の決意を揺るがし始めた。仕事と家庭の安定を捨ててまで、狩猟を続けるべきか。クロは頭を抱えながらも、目指してきた夢を諦めるわけにはいかないとも感じていた。

― 再びの出会い

そんな時、前回出会ったベテラン猟師の店を再び訪れることにした。彼の言葉がどうしても心に残っており、もう一度話を聞きたくなったのだ。店に入ると、ベテラン猟師がクロを見つけ、親しげに声をかけてきた。

「お兄さん、まだ迷ってるのか?」

クロは自分の不安や迷いを隠すことなく正直に打ち明けた。家族や仕事の責任、そして狩猟を始めることへの葛藤をすべて話すと、彼は深く頷きながら答えた。

「狩猟ってのはな、命と向き合うことだ。だからこそ、覚悟が必要なんだよ」

その言葉に、クロはハッとした。単なる趣味ではなく、命をいただくという行為に対する責任。だからこそ家族や自分の生き方と真摯に向き合う覚悟が求められるのだ。

「大事なのは、自分が本当に何を求めているのかを知ることだ。そして、それが見えた時、進むべき道も見えてくる」

ベテラン猟師の言葉は、クロの心を貫いた。彼は、自分が本当に求めているものが何なのかを改めて考え始めた。

新たな決意 ―

クロは帰宅すると、リビングで妻に向かい合い、深く頭を下げた。

「俺、やっぱり狩猟を続けたい。でも、家族のことも、仕事も大切にしたいと思っている。無茶はしないって約束するよ」

妻は驚きながらも、彼の真剣な眼差しを見て、ゆっくりと頷いた。

「わかったわ。あなたの決意、信じて応援する」

その言葉に、クロはようやく心が軽くなるのを感じた。家族の理解を得られたことで、彼は迷いを振り切ることができたのだ。彼の心には再び「冒険のいざない」への強い決意が芽生え、クロは一人前の猟師になる道を再び力強く歩むことを決意した。


追記

クロは「狩猟免許取得」を目指す中で、家族や仕事とのバランスに悩み、狩猟への道に対する葛藤を抱えました。特に「狩猟を始める覚悟」や「家族の理解を得る方法」など、狩猟生活を始めるにあたり多くの人が直面する課題が描かれています。また、ベテラン猟師との会話を通して、狩猟に向き合う際の「命への責任」や「真の覚悟」の大切さがクロの中で再確認されました。

狩猟免許

東京狩猟物語〜ゼロからの狩猟〜第8話へ続く